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ニューヨークからの手紙 −5− 銃社会のアメリカ
“武器を持つことでますます臆病に” 今年のアカデミー賞最優秀ドキュメンタリー映画としてオスカーを受賞した「ボウリング・フォ−・コロンバイン(Bowling For Columbine」の監督マイケル・ムア−(Michael Moore)氏。彼が受賞の際、スピーチでブッシュ大統領を批判、イラク戦争中でもあり、さまざまな話題を呼んだ。僕も自身のコンサートなどでブッシュ批判をよくするので、ムア−監督に興味を持ち、さっそく彼の映画を観に行くことにした。 映画は、1999年4月20日、コロラド州コロンバイン高校で起きた2人の生徒による拳銃乱射事件がテーマ。この事件で学生12人、教師1人が死亡。銃を乱射した2人の生徒も自殺するという衝撃的な事件であった。当然、事件後、メディアは大騒ぎし原因を追求しようとする。学校、家庭崩壊、銃の存在に問題がある、さらに、犯人の学生が聴いていたというマリリン・マンソンの音楽が良くない、など、原因追求は進んだ。コロラド州ではマリリン・マンソンのコンサートを中止にまでした。 ムア−監督は言う。「聴いていた音楽が良くないのなら、事件当日の朝、彼らがやったボウリングも良くないのではないか?」 ムアー監督の皮肉まじりの批判がこの映画のタイトル。 僕はこの映画を観て、久々にアメリカらしいドキュメンタリーを観たと感動した。映画の中でムア−監督がコロンバイン高校での事件の原因を追求する、アポなしの突撃取材で作り上げた映画。彼自身が銃王国ミシガン州で生まれ、子供のころから銃を手にしていた。 「銃があることがいけないのだろうか?」しかし、アメリカのおとなり、カナダは、国民の銃の所有率はアメリカより高いという。しかし、銃による事件はほとんどない。 彼はミシガン州デトロイトの北に位置する、カナダにある街ウインザ−に取材に行く。アメリカと同じようにさまざまな人種が暮らす都会なのに、みんなドアに鍵をかけない。彼が警察に行って銃犯罪の記録を調べると、ずいぶん昔に1件だけあった。しかし、それはデトロイトから来たアメリカ人が起こしたもの。 映画の最後は、現在アメリカライフル協会の会長で俳優のチャールトン・ヘストン氏にムアー監督がインタビューする。「なぜ銃を持つ必要があるのか?」「なぜ銃犯罪が他の先進国と比べアメリカは多いのか?」「コロンバイン高校の事件、またミシガン州フリントで起きた6歳児による拳銃殺人事件の直後、なぜアメリカライフル協会はこんな悲惨な事件があった現地でコンベンションを開いたか?」 ムアー監督の質問に困り、さらにフリントの事件で殺害された6歳の女の子の写真を見せられ、無言でその場を立ち去るヘストン氏。 さまざまな疑問を投げかけるこの映画は、シリアスな中にもユーモアを交え、エンターテイメント性も十分にある。Kマート(アメリカの大型デパートチェーン)の本社に行き、銃や弾薬の販売をやめさせるシーンは爽やかな感動さえ与えてくれる。 「人間は武器を持つと臆病になる」という言葉があるが、自分を守るために武器を持つということで、ますます人間を臆病にしているのが今のアメリカの現実ではないか、と僕は思う。武器を持っているから安心して暮らせる、これが果たして平和で自由の国と言えるだろうか? コロンバイン高校の事件当日、クリントン前大統領はコソボに最大級の爆弾を落とした。高校生が銃を乱射し、多くの人を殺害し傷つけた。大統領が他国に爆弾を落とす。武器を使ったこの2つの出来事に違いはあるのだろうか? 大切な人の命を奪った事実には変わりはないと思う。 (毎日新聞社点字毎日2003年1月9日掲載。禁無断転載) |